内灘の一日

先週日曜は天気が良く、金沢の6月はまだ暑くない。梅雨入りも目の前に控え、気持ちよく遊びに行ける機会はしばらくないかも、ということで、気になっていた北陸鉄道浅野川線に乗車し、終点内灘に行ってみる。

いつか行きたいと思いながら、気づけば1年以上経っていた。土日の定番コースを自分の中である程度確立してしまっており、意識して新しい経験をしないと、新しい経験を求めることさえやめてしまいそうな気がしている。

石川に住み始めて最初にしたことは、GoogleMapで温泉とソフトクリームを検索して行けそうなところにピンを立てることだった。内灘にはその両方があるということで、ずっと気になっている場所ではあった。ただ、バスはかなり限られているため、バスだけで観光するとなるとスポットを絞らなければならないかと思っていたのだが、駅前で電動アシスト自転車を借りられたので、気になっていたところを全部回ってみることにする。

とりあえず内灘砂丘を見に行く。マリンスポーツが盛んな様子。


そこからホリ牧場へ向けて7km程度自転車を漕ぐ。展望台から景色を眺め、夕日が当たると綺麗らしいサンセットブリッジを渡る。

長い坂を下り、牧場に近づくと牛が。牧場の匂いが久しい。そういえば、牧場のレストランでバイトしてたなあ、とか思い出す。

 普段からソフトクリームが好きでよく食べていたのだが、石川ではあまりソフトクリーム屋さんというものがなく、最近はほとんど食べていなかった。というわけなのでミルクとヨーグルトを1個ずつ食べてしまう。

帰りに温泉に寄って帰るつもりだったのだが、温泉の隣にこんなものが。ここでこの土地の近代史が、ポイントを押さえてまとめてあってわかりやすかった。

まず鉄道沿線開発の先駆的なモデルである宝塚を真似て作られた粟ヶ崎遊園が紹介される。モボ・モガの聖地だったということで、当時の服装も展示されている。第二次世界大戦により粟ヶ崎遊園は軍事に転用され、のちに解体される。なお、入園ゲートが資料館隣に移動され、保存されている。

第二次世界大戦後は、内灘砂丘が米軍の訓練場として接収されることになり、戦後初の基地反対運動の舞台となる。なるほど広い砂浜で、そういう用途に便利なだけでなく、近くに立地する小松製作所が防衛生産のための大型融資を受けていたこともあり、この土地が選ばれた。
当時の村の主要産業は漁業で、決して安定していなかったにもかかわらず、多くの人が闘争に参加し、全国的な注目を浴びる。北陸鉄道労組は反対運動の中心におり、ストライキによって物資の運搬を拒む動きもあった。

最終的に土地は接収され、訓練場として使用されることになるのだが、その補償として河北潟が干拓されることになる。稲作によって安定した収入源を得たいというのも、また土地の願いだったのだ。
そうして河北潟の2/3程度が干拓され、広大な平野となり、稲作と酪農がおこなわれている。いまや石川県の牛乳の50%近くがこのあたりで作られているのだとか。ちなみに、浅野川の北だから河北潟というらしい。


なるほど一面が平らなわけだ。先ほど見た砂浜が、先ほど食べたソフトクリームが、そういう意味を持っていたのだということを、危うく素通りするところだった。今の平和や豊かさが誰かの闘いの上にあるのであれば、そこに無自覚であるわけにはいかないと思う。そして、どう考えても採算がとれるわけがないこの資料館がなければ、ただ温泉に浸かって帰るところだった。どの自治体も財政が苦しいと思う。この資料館も、僕が入館するまでは節電のためすべて消灯しており、真っ暗で閉館していると思ったくらいだった。それでも、こういう取り組みはなくなってはいけないと思うし、知る責任も伝える責任もあると思う。歴史を無視して生きることは簡単だし、それはそれで幸福なのだけれど、その幸せは歴史から切り離すことはできない。応援になるかわからないけど、普段は買わない割高なグッズのノートを買う。
そして温泉に入って、北陸鉄道に乗って帰る。北陸鉄道だって、赤字だ廃線だ採算だ、というニュースが入ってくる。なくしたくないという理由だけで何もかも続けられないことはわかっているけど、北陸鉄道はこの土地にとって、ただの運輸業者ではないのではないかと思う。採算が取れないことこそ自治体がやるべきだが、多くの自治体にはそういったものを維持できるだけの体力がない。衰退を目の前にしながら、なすすべがない。競争に負けるというのはこういうことなのかもしれない。

今日は所要のため東京へ。東京へ向かう新幹線かがやきの中でこの記事を書いている。温泉に入るとき、「温泉の窓からかがやき号が見えますよ」と言われた。遠くの線路に、たぶん動いているものがあったので、あれがかがやき号だったのだろう。
かがやきの車窓から、サンセットブリッジが見える。その隣にあるあの小さな箱が、温泉だろう。これまで何度も新幹線に乗りながら、なんでもなかった景色だったのに、訪れることによって、知ることによってこれまでなんでもなかった景色が意味を持つ。たまにはまたこういう旅に出ようと思う。

追記
温泉はナトリウム―塩化物泉で、めちゃくちゃよかった。有色で、いいにおいがする。

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