[2025]今年読んだ73冊と良かった5冊

目次

ご挨拶

2025年が終わろうとしています。

毎年色々なことがありますが、今年も本当に色々なことがありました。

大学教員としてはじめて迎える年末です。去年の今頃は、大学教員になることを想像できませんでした。あれから1年で色々なことが変わりました。毎年毎年大きな変化を実感する中で、やはり、1年「くらい」という感覚にはなれず、どうも生き急いでしまっています。

そしてこれを指導教員の先生方に報告できたのは本当に嬉しいことでした。指導教員の先生に、大学教員に「なる」というよりも、教員として扱われる中で少しずつ教員に「なっていく」もしくは、「してもらう」のだと言っていただき、僕の大学教員生活がスタートしました。この1年、授業を担当し、研究者として活動し、校務にも従事してきました。しかしどうも、自身が大学教員になったという実感が持てないというのが正直なところです。そもそも、高専と大学院大学で学修しているので、四大に所属するのははじめてで、イメージを持てていなかったというのもありますが…。

ただ、今月は群馬~熊本~東京~熊本と毎週末出張があり、年末に設定したレポートの締め切りに合わせて添削依頼も大量に届き、ずっとバタバタしており、「師走」を感じざるを得ませんでした。そういう意味では、教員というアイデンティティが少しずつ身に染みてきたのかもしれません。僕自身もこれまでたくさん文章を添削していただきました。添削を通して学生さんのお手伝いができることは幸せです。

研究では、科研費の採択、紀要論文2本の投稿と、来年の国際会議での発表採択、博士後期課程入試というトピックがありました。
科研費については、K先生を中心に書類のチェックを何度もいただきました。ありがとうございます。自分一人の力では決して採択ラインに到達できるものではなかったと思います。ただ、自身の研究が研究として認められたことは素直に嬉しく、はじめて研究者として認められたような感覚になりました。もちろんプレッシャーもありますが、科研費には非常に助けられ、なんとか研究を進められています。国際会議にアプライできただけではなく、科研費採択に背中を押され、博士後期課程の研究計画書を書き、入試に臨めたという側面もあり、重ね重ね、ありがたく思っています。
紀要論文については、業務上の必要性に迫られて執筆したという側面が大きいのですが、この1年研究のブランクがあることもあり、1本は長いものを書きたいと思っていました(布袋がGUITARHYTHM IIを長編アルバムにしたのと同じ気持ちなのかもしれません)。来年度以降は論文誌に投稿できるように頑張ることになるのですが、今年度こういう機会をいただけたことは非常に良かったです。
研究自体の進捗は正直まだまだ思わしくないのですが、ひとまず、初年度としては及第点なのではないかと思っています。今年は学会・研究会での出会いと再会を経て、来年以降の研究につながる示唆をたくさんいただきました。引き続き頑張っていきます。

そして地方小規模大学である以上仕方のない部分もありますが、校務が非常に重い印象でした。昨今の「大学」をめぐる状況は大変なもので、校務は大学の自治や存続に関わる重要なものになっています。「教員は教育・研究だけしておけばいい」という立場に立てるような状況ではなく、本務校の先生方も手を抜かずに校務に取り組んでいらっしゃいます。僕自身も、他大学の助教では絶対にできない(本当に。)経験も多く、大変プレッシャーを感じる一方、貴重な経験をさせていただきました。

ただ総括すると、やりがいのある仕事ができて、本当に幸せな1年でした。改めてですが、僕がこの仕事に就けたことは本当に「運が良かった」ということに尽きます。謙遜でもなんでもなく。労働時間は伸び、年収もだいぶ下がったのですが、それを補って余りある、貴重な機会・経験に預かれたことに感謝の念が絶えません。本務校に限らず、大学や教員という職については暗い話題ばかりで、先行きには不安しかなく、私個人としても、自分で選んだとはいえ、任期付きという不安定な身分であることの不安は相当なものです。「この職をいつか続けられなくなるかも」と思いながら働かざるを得ないのは本当に残念です。今後も大学が大学であり続けられるように、奉職したいと思います。

今年読んだ本と読んでよかった本

さて、今年は73冊の本を読みました。(漫画は既刊読了で1冊カウント)

全然足りないのですが、今年の年初は退職・引っ越し・着任で忙しかったし、論文も読むようになったし、仕方ないかなと言い訳しています。来年は300冊読みます。(毎年言ってる)

去年までの読書リストと比べると、やや実務的な雰囲気が強い感じがします。研究を深める読書というよりも、浅く広く新書を渉猟している印象もありますね。いや、やっぱり今年は腰を据えた読書ができていませんでした。来年は学究しようと思います。

この中で今年読んで面白かった/よかった5冊をピックアップして紹介したいと思います。

企業経営のエスノグラフィ

本来もっと早く読んでないといけなかったのですが、今年編著者の先生とお会いする機会があり、読了しました。こういうエスノグラフィを書きたくてJAISTに入学したはずだったのだが、と反省させられました。文化人類学は最近流行り直している感じがしますが、僕達は人類学者”でない”人間としてエスノグラフィを志向する新たな世代となるはずです。僕もいつかこういうエスノグラフィを書けるように、頑張りたいと改めて思いました。

精霊に捕まって倒れる

子供の命がかかっている極限状態のもと、「他者の(一方から見たら迷信に見える)信念」同士がぶつかり続ける現場を、丁寧に振り返りながら記述するルポルタージュ。このケースでは暴力を保有する側が、「コンプライアンス」のような支配的な言語・思考を押し通したが、若年の死者も多いモン族の文化知として、(シャーマンがそうであるように)病人や死者への救済のロジックを有しているように見える。救うとは、治すとは、命か魂か、文化相対主義の実践とは何か。読者に永遠の論点を刻む一冊でした。僕の師匠も参画している本で、これももっと早く読むべき本でした。でも、今年読めて本当に良かった。

暴走族のエスノグラフィー―モードの叛乱と文化の呪縛

フィールドワーク、読書量、発想など、エスノグラフィを志す者に必読・お手本とされる所以がわかる有名書。古典となりつつあります。 「恥知らずな折衷主義」と最初に断ってあるとおり、幅広い分野から理論・文献が参照されている。定式的な手続きだけで研究が完了しないエスノグラフィという手法において、一方では様々な言説を批判しつつも幅広く援用するバランス感覚の難しさを感じる。大学院時代は直接修論に引用できそうな本しか読めなかった(それは主に気持ちの問題で)ので、こういう本を読む余裕が出来たのが嬉しい。

人新世の資本論

資本主義が労働と自然環境からの収奪により成り立っていて、持続可能でないことを示したのち、資本主義・加速主義はむしろ「欠乏」を生み出しているとして、空虚な価値に拘泥せざるを得ない資本主義・加速主義から脱却し、脱成長コミュニズムを推進すべきと主張。 人が地球環境を変えるまでに影響を及ぼしてしまったが、それは実は人新生ではなく、「資本」新生だったのかもしれない。

これまでサンデルやシューマッハを読んできましたが、年に1冊くらいは脱成長思想を読んでおきたいと思います。思想という意味では、今年は森三樹三郎先生の「老荘と仏教」を読めたのも良かったです。最近はあまり思想に触れる時間がないので、意識して読みたいと思ます。

俺と師匠とブルーボーイとストリッパー

北海道の書店で目が合い、開くと北海道を舞台とした作品だったのでその場で購入して読みました。

演歌もロックも、みんなシャンソンなの。ひとの生きる切なさや怒りを閉じ込めた歌は、みんなシャンソンと呼ぶのよ

人が生きる「営み」と出会いと別れの儚さが綴じ込まれていて、「仕方ない」清濁を飲み込み、自分に嘘をつかず、目の前の日々と人々と向き合っていく時間は派手ではないけどロマンティックで、所与の別れさえ、もしくは別れることこそが美しいのだと思わされます。

あれからいろんなことがあったんですよ、話したいことがいっぱいあるんです。

お別れは再会のためにあるものだと思っていますが、そのことを再確認できるような読書体験でした。

おわりに

今年もたくさんの出会いと再会がありました。会いに行けたことも嬉しいし、会いに来てくれた皆さんもありがとうございました。来年も出会いと再会に心を開けますように。

来年からは博士後期課程の研究が本格化しますし、任期の残りが短くなったことで自分の人生がまだまだ落ち着かないなかで生きていかなければなりません。しかし同じ状況でも、心の持ちようで経験は異なるものになります。僕は焦りにやられて身動きが取れなくなることがよくあります。学究のための本を読むことはもちろんですが、小説や新書の読書の時間を意識的に読んでいきたいと思います。今年はあまり習慣的に読めなかったので、来年は生活に組み込みたいですね。

この年末には、非常に失望的な出来事がありました。イエスマンになれるメンタリティならこの職に就いていません。今後の立場は良くないのでしょうが、言うべきことを誠実に言えたことは誇りたいと思います。「それは怒って当然だ」と言ってくれる人がいたのも救いでした。もしかしたら僕は、この出来事を機に大学教員として生きるのかもしれません。

自身を飼い殺すことで裏切るのは自分自身だけではないと考えるようになりました。自身の力を発揮できるように、自身の力を高め、証明しなければなりません。来年からは限界まで自分を追い込み、自己嫌悪に苦しみながら、この世界で生きていけるように研鑽します。

来年もきっと、今年想像もしなかった新しい人生に出会えますように。

来年もきっと、新しい出会いと、嬉しい再会がたくさんありますように。

どうか皆様、良いお年をお迎えください。

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